【12/22】第21回OJAS映画上映会 今月の作品は『孤独な天使たち』

ベルナルド・ベルトルッチとニコラス・ローグ二人の巨匠の死を悼み。辿り着いた景色を発見する。

『孤独な天使たち(Io e te)』

2012年 イタリア映画
監督:ベルナルド・ベルトルッチ
脚本:ベルナルド・ベルトルッチ/ニコロ・アンマニーティ/ウンベルト・コンタレッロ/フランチェスカ・マルチャーノ
原作:ニコロ・アンマニーティ
音楽:フランコ・ピエルサンティ
撮影:ファビオ・チャンケッティ
編集:ヤコポ・クアドリ

出演:ジャコポ・オルモ・アンティノーリ/テア・ファルコ/ソニア・ベルガマスコ/ヴェロニカ・ラザール/トマーゾ・ラーニョ/ピッポ・デルボーノ

12/22(土)開演19:00 入場無料!(5分前にはご来場ください)

開場:ヨガオージャス武蔵小杉スタジオ

食べ物飲み物持込OK! 会員様以外もOK!
お友達やご家族もご一緒に楽しみましょう!!!
オージャス初めての方もお申込み可能です。

共に60年代から活躍してきた二人の巨匠が11月末に亡くなった。

僕はこの上映会を行ってる意義は映画の布教活動に他ならない。だからなるべく映画マニアじゃない人達が出会わないような作品を上映することを勝手に使命としている(笑)

という僕の思いから立て続けの訃報を耳にした際、やっぱりニコラスローグだなと考えていた。
だってベルトリッチは『暗殺の森』『ラストタンゴ・イン・パリ』『ラストエンペラー』など誰しも聞いたことがある名作が並んでいる。

それに比べといってはなんだがニコラスは残念ながらヒット作には恵まれていない。
一番有名な作品『赤い影』でさえ知る人は少ないだろう。しかしその独自の映像美は比類なきもので後の映画作家に強烈な影響を与えた(スティーブン・ソダーバーグ監督クリストファー・ノーラン監督ダニー・ボイル監督など、正にどれも現代を代表する作家達だ)

だから巨匠と言うより鬼才という表現が正しいかもしれない。

そんな二人はイギリス人とイタリア人という違いはあれど、作品に於ける共通点を多く見出すとことができる。なんと『シェルタリング・スカイ』はニコラスも映画化権取得に奔走していたらしいから、それが実現していたらと思うと胸が弾む。ニコラス・ローグ監督の『シェルタリング・スカイ』
それともうひとつ二人を繋ぐ共通点が、今作品の中で特に重要な役割を果たすデビッド・ボウイ・・・

そして僕の中で色んな思いが二転三転し結果的にはベルトリッチにしようと決めた(笑)

しかも代表作ではなく、ベルトリッチが初メガホン作から50周年で最後の作品。前回の「ドリーマーズ」から9年ぶりの作品である。その間の病気と闘い克服してようやく取り掛かった作品なのである。
本人自身これがの最後の映画と悟っていたように僕は想う。70代になった巨匠が最後に遺した作品は青春映画だった。それは若さといものに対する憧憬であり無条件の称賛であると僕は思う。

作家は処女作に向かって成熟する。

これを観ずに死ねるか!

以下は
【あらすじ】※ネタバレ注意!

秘密の作戦

14歳のロレンツォは孤独を好む神経質な少年。他人とうまくコミュニケーションをとることができない彼は、学校に馴染めなかった。
そんな息子を心配して両親は精神科に通わせていたが、大した効果はなかった。
そんなロレンツォが毎年恒例の学校行事であるスキー合宿に参加することを母に告げる。彼の珍しい行動に母親のアリアンナは大喜び。

しかし合宿に参加するというのは嘘で、ロレンツォには秘密の計画があったのだ。ロレンツォは親から貰った合宿費用を払わず、そのお金で地下室の合鍵を作り、一週間分の食料を買い、ペットショップで蟻の巣作りを観察する為の水槽を購入していた。

そして合宿に出発する日。上機嫌のアリアンナは集合場所までロレンツォを送って行くのだが、ロレンツォはその途中で降ろしてくれと車内で騒ぎ出す。そしてロレンツォは計画通り母親の車から降り、皆が集合する場所へ行くフリをして自宅へと戻るバスに乗るのだった。
ロレンツォの秘密の計画の実行場所は、自宅マンションの建物内にある地下室だった。ロレンツォは、合宿中の一週間をここで過ごすことこそが彼が計画していたことだった。

地下室にはトイレや洗面台、そしてマンションの前の住人だった伯爵夫人の家具なども置いてあった。ロレンツォは存分に孤独に浸れる居心地のいい空間を作り、電話をしてきた母親にはバレない様に楽しくスキーをしていると嘘をつくのだった。

2日目

翌日、そんな彼の前に腹違いの姉であるオリヴィアがやってくる。彼女は母親とカターニアで暮らしていたが、ロレンツォの自宅宛に送っていた。しかし家政婦は荷物を家ではなく、地下室に置いたのだった。だから自分の荷物を地下室へ取りにきたのだった。

ロレンツォの父親はオリヴィアの母親と別れてアリアンナと結婚した。オリヴィアは自分の父を奪ったアリアンナを憎んでいた。以前はオリヴィアが父親を訪ねてロレンツォの家へ来ていたが、最近は遠ざかっていた。慌ただしく自分の荷物を確認する。オリヴィアに自分のことを口外しないよう頼むロレンツォ。オリヴィアはすぐに何処かへ行ってしまう。

その夜、再びオリヴィアがあらわれ、行きところがないから地下室の中に入れるようわめきたてる。仕方なく彼女を地下室の部屋に入れるロレンツォ。ロレンツォはスキーに行く予定だったが親には内緒でここにいるのだと説明する。オリヴィアはすぐに眠ってしまう。

3日目

朝になっても部屋から出る気配のないオリヴィアに内心苛立つロレンツォ。そこに母から電話がかかってくる。オリヴィアは先生に成り済まし、口裏を合わせてくれて彼の窮地を救うが、それによってロレンツォは彼女に借りを作ってしまい、すっかり立場が逆転してしまった。
せっかくの一人の空間を壊されて迷惑なロレンツォ。しかしそんな彼の前でオリヴィアが突然嘔吐する。彼女は麻薬中毒者で、薬をやめようとしている最中の身であった。

4日目


オリヴィアは朝から調子が悪そうで何度も嘔吐を繰り返していた。クスリ断ちによる禁断症状が出始めていたのだ。ロレンツォは心配しながらも、ささいなことから口論が起き、オリヴィアを突き飛ばしてしまう。彼はそんな自分の行為に罪悪感を覚えるのだった。

5日目


睡眠薬がなくなったことで苦しむオリヴィア。“助けて”と泣きながらすがりついてくる彼女を見かねたロレンツォは、真夜中に祖母が入院する病院へ行き、祖母が使う睡眠薬を盗に出掛ける。
無事に睡眠薬を手に入れて戻ってきたロレンツォ。しかしその前には、見知らぬ中年の男と一緒にいるオリヴィアが居た。無断で人を入れたことが不愉快なロレンツォはその男を早々に追い出す。オリヴィアは写真家の卵でもあり、自分の写真を男に売ろうとしていたのだった。彼女の意外な側面を知ったロレンツォ。

6日目


オリヴィアは睡眠薬を飲んで眠り始める。同じようにロレンツォも睡眠薬を飲み、二人は隣同士で眠る。もはや彼女は疎ましい存在ではなくなった。
二人は丸一日眠り続け真夜中に目が覚める。二人でロレンツォの自宅へと侵入し食料やタバコをこっそり調達して地下室に戻る。そして最後の晩餐を楽しむ二人。
オリヴィアは写真やビデオアートで大きな賞をもらったこともあるアーティストだったがクスリで駄目にしてしまったことや、昔の彼氏と一緒に農場でやり直すことなど色んな話しをしてくれた。
オリヴィアはデビッド・ボウイの曲を聴きながら踊り出し、ロレンツォを強く抱きしめてくれる。ロレンツォもオリヴィアを抱きしめ返す。この曲は二人の為に作られた曲のようだった。
オリヴィアはロレンツォに「隠れるのはやめてちゃんと生きる」よう約束させる。そしてロレンツォもオリヴィアに麻薬を絶つよう約束させる。
しかしオリヴィアは寝付けず、こっそりヤクの売人から麻薬を購入するが、ロレンツォの寝顔を見て葛藤した末に麻薬の入った袋を煙草の箱にしまうのだった。
二人はこの短い間に大きな変化を遂げる。

最後の日

地下室を片付けたロレンツォとオリヴィア。部屋を立ち去ろうとするオリヴィアがタバコを置き忘れていたことにロレンツォは気付き、それを持って慌てて彼女を追いかける。
煙草を手渡した瞬間オリヴィアは複雑な表情を見せる。
「2人のスキーウィークをまたやりたいね」と言いながら、ロレンツォはオリヴィアに笑顔で別れを告げる。路上で熱い抱擁を交わす二人。

それぞれ別の道を歩いていくのだった。


ベルトルッチを囲むスタッフ達

 


『暗殺の森』より
映画史上最も美しいワンシーンのひとつ。これは正にバロック芸術の絵画のよう