【2017/1月号】渾身の詩作を発表!タイトルは・・・

この素晴らしき光の世界

はじまりの光を求めて
あらかじめ失われた音をつないでいく

東の空が白みはじめる6月のハノイ
蓮の花咲く夜明けは光と共に訪れる

インドの街に立つ目を潰された少女を
いつも優しい光が守ってくれる

内戦のシリアから僅かな荷物を持って
ひたすら歩き続ける家族を 光が導く

エレガントな装いで砂埃の道を闊歩する
サプール達は アフリカの希望の光

恐怖で足がすくみ動けなくなった
美しい空中ブランコ乗りの娘に
光が勇気を与える

家族の期待を背負い 農村から上海へ
懸命に働く少女の笑顔は
未来への光を約束している

モスクワの裁判所で自由を叫ぶ
女性パンクロッカーの振り上げた拳は
光を放っていた

言葉を捜しに東京の街を夜通し歩き回り
泣き崩れる惨めな20代の朝にも
光はやってくる

ワルシャワ郊外で暮らす
老人が見つめる遠くの森にも
今では光が溢れている

ケープタウンの牢獄で 永遠とも思える
長い時間を耐え抜いた男の心は
強い光に包まれていた

弾圧に抗議しながら 燃え上がった身体で旅立つチベット僧侶の雪の下からも
光はうまれてくる

毎日からだをヒジャーブに閉じ込められた
サウジアラビアの女性が過ごす部屋に
今日も光が差しこむ

オランダのバロック絵画は
アムステルダムの美術館から
今も無数の光を発している

熱狂するペンシルバニアの大統領選
失業中の男の 幸せだった思い出は
光となって蘇える

最悪な日常が繰り返すファベーラでも
子供達が蹴るサッカーボールは
いつだって光に包まれている

旅人を乗せた車のタイヤは
白い線を抱きしめながら永遠へと進んでいく
まだ見つからない光を目指して

愛よりも 金銭よりも 信心よりも
名声よりも 公平さよりも 真理を!
そう誓い荒野へ向かった幼き探求者は
最後の光の中に本当の答えを見つけた

深夜三時の巨大なサーバールーム
動き続ける無数のコンピュータから
光が世界中へと流れていく

そして武蔵小杉の 西小山の 青葉台の
普通で 安全で 穏やかな時間が流れるこの場所で
いつもと同じ光が降り注ぐ

光は永遠であり 命であり 影であり
全てであり 半分であり 1/3であり

眠っている時間も世界のあちこちで
宇宙のどこまでもそれは続いていく

僕らが迷い誤っても
光を見失うことはない

例え闇に呑み込まれて
消えかかるほど遠く離れても

その僅かな光を頼りに
また歩きはじめることができる