【2017/2月号】ゆく川の流れは絶えずしてしかも、もとの水にあらず

ラーメン山頭火

現在第45代大統領の就任式が放映中ですが、ここ最近こんな内容が続いてるので、今回はぐっと我慢し(笑)

今月の聖句とちょっと関係あるような無いような・・・最近中学の同級生と食事してて、普通のラーメンが食いたい!って話になりまして。普通のラーメンと言っても、人の数だけ普通は存在しますが、福岡生まれの僕にとってのそれは『豚骨ラーメン』になります。僕の町でラーメン屋(中華料理屋も含む)に入ってラーメンを注文すると、当たり前に出てくるのは豚骨ラーメンです。だからラーメンを食べたい=豚骨ラーメンを食べたいと言う事になります。そしてそこには、スープの濃さとか麺の堅さなんて指定もありません。その店の普通が提供されます。そして所変わって現代の東京では、地球を飛び越えて宇宙に行ってる位進化している状況です。勿論努力をし続けたお店の人達は尊敬しまし、現代に於いて日本が世界に誇る食文化の代表でもあります。しかし!その一杯の世界にてんこ盛りの状況に僕は辟易とするのです。

例えば味付け半熟煮卵、炙りチャーシュー、Wスープ、香味油・・・今となってはこれが普通になってますが、スタンダードな福岡豚骨には合いません。けれどもそう言った判り易い付加価値を付けなければ、多くの人に美味しいと言う情報を伝達出来ないのです。80年代半ばからご当地ラーメンブームが起こり北海道(札幌・函館・旭川)喜多方、そして『なんでんかんでん』のブームにより、今日の日本のラーメン文化の新しい幕開け、正に明治維新が起こります。

ここで、豚骨ラーメンから連想される=コッテリ・バリ硬というイメージですが、敢て批判を恐れず言います。本当は寧ろ『あっさり・軟め』素朴な甘みが感じられる仕上がりです。



我が町福岡県大牟田市の福龍軒。申し訳ないここの豚骨ラーメンが日本一上手い!
僕は変わった子だったから小学5年の時に市内のラーメン屋を電話帳で調べて全部食べ歩いて評価していた。
今だったらそんな小学生もいるかもしれないけど、当時は変人扱いだったね

この前、ある博多ラーメン屋で店主に「なんでこんなに塩っ辛いんですか?」と質問した所「僕もお客さんと同じで好みじゃないないですが、こっちのお客さんはこれじゃないと物足りないって言われるんです」と仰ってました。これを僕はラーメン界に於ける『山頭火の功罪』と名付けます!しかし博多ラーメンをブームに、このキャッチフレーズは必要でした。そして今では博多ラーメンはバリ硬が普通です。これこそ一番声を上げて言いたい『バリ硬は美味しくない!』アルデンテは硬い訳ではありません!丁度よい硬さです!!

バリ硬や粉落しが普通になった東京の博多ラーメン屋は普通の湯で加減が判らなくなってます。だって注文されないんだから仕方ありません。それは中心があっての調整ですから、バリ硬・粉落としに繊細な湯で加減は必要ないのです。僕の憂いは所変わってイタリア『真のナポリピッツァ協会』の悩みと共鳴します。新しい物を否定する訳ではありませんが、伝統的なものを守るのは革新を創り出す為にも必要な事です。下らないオッサンの嘆きと言われようと・・・
だから僕はこの街で昔ながらの東京醤油ラーメンを探します。それは取材等と無縁な街の中華料理に存在します(正に平凡なメニューを黙々と作り続ける非凡な名店)。これまた絶滅危惧種!西小山でも1つの灯火が消えました。
でも最近嬉しい事に日本人が作る南インドカレーがブームで、素朴で普通な味わいでが、僕の年齢の胃袋に丁度いい。
消え去りしもの、生まれいずるもの・・・それが人生か!



僕が20代を前半を過ごした町は、かの有名なときわ荘があった近く。トキワ荘の偉大な漫画家たちは『松葉』に行ったんですが。僕は駅と家の中間にあるこの『松月』って店がお気に入りだった。偉大なる無名な街の中華食堂。これは絶滅危惧種レッドゾーンですよ!安いのに旨い、そして落ち着く。